野菜の味の、違いの理由

 例えばお米には、「コシヒカリ」「あきたこまち」・・・何百もの品種があります。あまり知られてはいませんが、野菜にもそれぞれの野菜に百も千もの品種があります。それぞれに味や日持ち、栽培の容易さが異なります。

 一般に出回るための野菜作りですと、一に日持ち、二に見た目(の揃い)、三に味・・という場合がよくあります。
プロ仕様の野菜では、一に味、二に味、三に味・・といえるほど、味に特化した品種を選び生産しています。

 もちろん他にも理由はありますが、やはり一番は「品種」と言えそうです。

 たとえば味の違いが非常に分かりやすい「トマト」。トマトの品種は、国内だけでも1万種類を超えます。海外も合わせると10万を超えるでしょう。当然一つ一つの品種に違いがあります。
 日本には昔流行した、「ポンデローザ」という品種がありました。味が濃く真っ赤でトマトの青臭さも強く、それでいて甘みもコクも強い。食べ応えのあるトマトです。ただこの品種は、傷つきやすく棚持ちが悪くて、形がいびつなものが多く果肉が柔らかくすぐ傷がつきました。畑で真っ赤に熟したトマトを冷やして塩かけて丸ごとかぶりつくことができるなら、今でもこの品種に勝るものは無いだろうと思います。ですがいかんせん、流通に弱かったのです。形がいびつで不揃いですぐ潰れる。

 30年ほど前にトマトの主流品種となった「桃太郎」は、形もそろっていてきれいで、赤くなる前に収穫してもだんだんと赤くなり、赤くなってからも果肉がしっかりしている。しかも”結構”美味しい。農業者にとっても、そして消費者にとっても衝撃的な改善でした。
 そういう理由で、通常の一般市場に出回るトマトはこの「桃太郎」一色となったわけです。(最近はまた違いますが)

 さらにそうして主流品種になったものの中には亜種も出てきて、農作業の手間を減らしてくれる特徴を持った品種が出てきます。例えば「花の付く個数が一定だから、手入れしなくても同じ大きさ」になる品種とか、「わき芽が出にくいから、邪魔な芽を取る作業が少なくなる」品種とか、「受粉しなくても実がつくから、受粉作業をしなくていい」品種とか。それらの品種はすべて、私たち農業者の猛暑の中の労働を軽くしてくれます。ですが反面、味が少しずつ犠牲になってもおかしくないわけです。
(もちろん必ずしも味が落ちるということはありません。味も良くて作業も楽な品種を私たち農業者は渇望してるのですが・・・。)

 もうお気づき頂けると思います。そう、レストラン向けプロ仕様の野菜を作る私たちのような農業者は、手間がかかろうが多少作りにくかろうが、味のため”だけ”の品種選びができます。そしてそういう品種で作ると、既存品種と比べて相当な味の違いが出てきます。もちろん作りにくかったり、そもそも作り方もよくわからない中で試行錯誤を重ねながら。

 そういう品種で作ると、確かに日持ちしないかもしれない。けれどそれは直送すればシェフが超速の手際の下処理で何とかしてくれる。確かにサイズがバラバラかもしれない。けれどそれもシェフが、芸術的な包丁技術で何とかしてくれる。そのような信頼を基に、普段私たちは味”だけ”を追求して農業生産をしています。

 このたびそれを販売させていただくにあたり、よく目にする野菜とは少し使い勝手が異なるかもしれませんし、数に限りが出てくるかもしれません。若干金額が高いかもしれません。けれどもそれは、私たちが培ってきた農業生産技術の結晶でもあります。

 決してその違いを甘えにすることはありません。ただ、私たちの野菜”も”、少しでも楽しんでいただける機会を頂けるといいなと願いながら、本サイトをオープンさせていただきました。

 よろしくお願いします。

 もちろん違いは品種のみではないので、その他の点については追って記していきます。
 ひとまずは、ここまでです。